究極のクラウド センター オブ エクセレンス (CCoE) フレームワーク

デジタル変革においてクラウドの導入は、戦略的に不可欠な基盤だとみなす企業が増える中、プロセスを管理し、ベスト プラクティスを組織全体に浸透させるために、クラウド センター オブ エクセレンス (CCoE) の設立が進んでいます。

CCoE は、従来、多くの企業が用いている、一時的手法に代わるものです。業務部門がクラウドの導入を希望したら (そして IT 部門に相談が入ると)、IT 部門はその部門の目標達成を支援するため、時間と人員を投入する必要があります。その結果、他の優先事項や日常業務に投じるべき時間と労力が削られることになります。

「デジタル変革に取り組む大手企業で課題となるのは、組織全体でクラウドへのアプローチ方法についての価値観を広く共有することです」と、クラウド コンサルティングを手がける Rearc 社のプリンシパル アーキテクト兼共同創設者であり、前職 Dow Jones 社の DevOps 担当ディレクターとして組織の CCoE 設立を指揮していた Milin Patel 氏はこのように語っています。「CCoE は、あらゆる関係者が参照できる中央組織であり、CIO と CTO がビジョンを伝える場でもあります」

CCoE を設置することで、IT は反復可能で一体化されたポリシー・フレームワーク・手順・リファレンスアーキテクチャを集約できます。組織のアプリ開発チームやインフラストラクチャ チームは、アプリケーションやインフラストラクチャをクラウドに移行する際に、そうしたポリシーを指針として利用できます。その結果、時間と労力を節約しながら、クラウド移行が完了するまでおろそかになりがちな、セキュリティやコンプライアンスの重要な問題にも優先して取り組むことができます。

クラウド センター オブ エクセレンスとは?

あらゆるセンター オブ エクセレンス (全社横断の中核組織) と同様、CCoE は、組織のあらゆる部署から豊富な知識を備えた多様なエキスパートを選抜してグループを構成し、全社で活用できるベスト プラクティスを開発します。CCoE の場合、こうしたベスト プラクティスはクラウド関連が中心となりますが、CoE は組織が取り組んでいる長期的な戦略イニシアチブのために展開されます。

クラウド導入は、ほとんどの組織で加速度的に進んでいますが、現時点で CCoE が十分に機能している組織はほとんどありません。しかし、その流れが変わりつつあります。最近の調査によると、本格的な CCoE の設置に向けて準備を進めていると答えた組織は全体の 47% にのぼりますが、実際に CCoE を設置済みと答えた組織はわずか 16% でした。

クラウド センター オブ エクセレンスは、クラウド ビジネス オフィスなど、多くの中核チームの 1 つにすぎません。しかし、FinOps クラウド運用モデルを成文化することで、FinOps チームと称する組織はどうあるべきかが明らかになってきました。FinOps は、クラウド ベンダー管理、料金と割引の最適化を行う、テクノロジー、ビジネス、ファイナンスの各組織で構成されるチームです。これは、クラウド センター オブ エクセレンスの進化形であり、拡張性に優れたクラウド イノベーションを実現するうえで FinOps は欠かせない役割を担います。

CCoE は必要か?

多くのビジネスと同様に、貴社も何らかのクラウドをすでに導入していることでしょう。そのため、この質問への答えは、これまでどの程度の成功を収めているか、そして組織の成熟度によって異なります。組織の成熟度が低い場合、CCoE の構築作業はより難しくなります。しかし、クラウド移行を通じてデジタル変革への取り組みを強化するなら、構造化された反復可能なクラウド移行ロードマップの開発方法を見出すことでその取り組みは容易になります。

「クラウド移行は容易ではないため、(クラウド移行戦略の) 肝となるのは、ワークロードのクラウド移行を手がける真のエキスパートを確保することです。」CCoE を 3 年にわたって運営している ヘルスケア マネジメント企業の Magellan Health 社 (売上高 70 億ドル) で CIO-シェアード サービス担当を務める Vijay Gopal 氏は話します。「CCoE という名称でなくても、企業はホワイトペーパーベースのアプローチから脱却し、進むべき方向性を示してくれる実務に精通したエキスパートをそろえる必要があります。」

効果的な CCoE の構成メンバー

CCoE の構成メンバーは、組織の変化やクラウド需要の増減に応じて異なるでしょうが、中核となるロールは固定するべきです。クラウドは、あらゆるビジネス プロセス、業務部門、アプリケーション、データ セット、従業員含む組織全体に関わるものであるため、これらに関係するロールに欠員が出ないよう常に補充する必要があります。さらに、クラウド製品は多岐にわたるため、さまざまなクラウド オプションの内容とその機能に精通しているエキスパートも加えるべきでしょう。多くの組織は、このロールにコンサルタントを登用しています。AWS エグゼクティブ アドバイザーの Elizabeth Boudreau は、AWS の 2018 年パブリック セクター サミットで、CCoE には少なくとも次の部署の人員を加えるべきだと述べています。

  • 経営陣: グループが信頼性を確立して維持できるよう支援し、グループに管理組織として機能するために必要な権限を与えることができる、バイス プレジデント レベルまたは同等レベルの人員です。グループの信頼獲得と維持を支援し、管理組織として機能するために必要な権限を与えることができる、バイスプレジデントレベルまたは同等レベルの人員です。
  • オペレーション: チームには、ビジネスがどのように機能するか把握している人員が必要です。こうした人員は、アプリケーションの依存関係や、クラウド移行によるワークフロー、プロセス、手順への影響など、さまざまな点について助言を与えることができます。
  • インフラストラクチャ: リフト アンド シフトに関する専門知識を提供する人員です。そうした専門知識は、IaaS、PaaS、SaaS、ハイブリッド、プライベート、パブリックなどのシナリオで、クラウド モデルがどのような効果をもたらすかを特定することができます。理想的には、どのインフラストラクチャを使用してどのアプリケーションを実行し、データを保存しているか、クラウド移行に伴いこうした依存関係がどのように変化するかを把握できる人員が望ましいでしょう。
  • セキュリティ: クラウドに移行することで、ユーザー認証からネットワーキング、アップデート、パッチ修正まで、あらゆるアプリケーション タッチポイントでのサイバー セキュリティの動作も変化します。そのため、クラウド移行戦略に最初からサイバー セキュリティの要素を組み入れることができる人員が必要です。サイバー セキュリティ対策を後回しにするのは、もはや許容されない選択肢でしょう。
  • アプリケーション: クラウドへの移行は組織のすべての人員に影響を与えますが、CCoE の主な構成員はアプリケーション開発者です。そのため、このエキスパート グループの懸念や課題を代弁できる人員がクラウド移行の成功を左右する鍵となります。

「CCoE の目的は、組織のあらゆる部署が利用できる反復可能なフレームワークとベスト プラクティスを確立することです。そのためCCoE メンバーには、一定の品質が求められます」と、Patel 氏は Amazon Web Services (AWS) のブログ投稿で述べています。求められる要素とは:

  • 実験主義: 失敗から学び、すばやく反復できる
  • 大胆さ: 現状打破を恐れない
  • 結果重視: アイデアを構想段階から実装の成功へと導くことができる
  • 顧客中心主義: 開発者の生産性とオペレーショナル エクセレンスの影響を把握できる
  • 影響力: 自身のスキルを周囲にスケール、広めることができる

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クラウドファイナンス管理の新たなアプローチ

CCoE で成功を収めるには

多くの企業がクラウド センター オブ エクセレンス (CCoE) を設置してクラウド移行を進める中、重要なのは、成功につながる CCoE のあるべき姿を理解することです。指針がない状態では、CCoE での膨大な量の時間工数とエネルギーの投資が、正しく機能するかどうかわからないままに無策で進めることになります。

「私たちの場合、ワークロードを本番環境に移行し、運用できる状態が最終的な成功指標です」と、Vijay Gopal 氏は語ります。  最善の策として、Gopal 氏は、ソフトウェアの経験を持つエンジニアを CCoE の一員に迎えることを推奨しています。Magellan における CCoE の固定メンバーは 6 人で、クラウド プラットフォームの開発および更新、利用チームを対象としたオンボーディングの実施、アプリケーションのクラウド移行作業の支援を担当しています。

CCoE リーダーのチームの選択

「CCoE の効果を最大化するには、部署の枠を越えて組織全体から優秀な専門家を集め、多様性に富んだグループを構築し、ベスト プラクティス、フレームワーク、リファレンス アーキテクチャ、ガイドラインを開発する、そしてそのガイドラインに則り、組織全体が将来アプリケーションやデータをクラウド移行できるようになっているべきです」と、クラウドネイティブのシステム インテグレーターであり、オンプレサーバーを持ったことがない VAR である、JHC Technology 社 バイスプレジデントの Matt Jordan 氏は語っています。

「トップから力強く指導することが重要です」と Jordan 氏は続けます。「経営陣から、人事やコミュニケーションに至るまで、組織内の枠にとらわれずに人材を集めてグループを構成するべきです」

CCoE の中心となるのは、経営陣、セキュリティ、アプリケーション開発、オペレーション、インフラストラクチャの各部門から選抜した人材です。必要に応じて、マーケティング、財務、サービス デスク、人事、カスタマー サービス等からもメンバーを追加し、特定の問題領域への対処、アプリケーション移行計画の開発支援、依存関係の明確化に加え、(フローチャートやビジネス プロセスで想定した機能に対して) 影響を受けた各領域が、実際どのように機能しているかを CCoE が吸い上げることも容易になります。

CCoE は、支援の要望が多いほど、成功していると言えます。

ユーザー像の把握

クラウドは組織のすべての人に影響を及ぼしますが、他と比べて影響が大きい部署もあります。その代表例がアプリケーション開発とオペレーション部門です。自社所有のインフラストラクチャから脱却して本番のワークロードをクラウドで運用するのは、大きな変化です。

開発とオペレーション機能を統合した DevOps を促進する企業が増えている中、混在環境にクラウドを導入することは、アプリ開発チームとオペレーション チームの組織構造に大規模な変化をもたらす可能性があります。アプリケーションを常に最新の状態に保ち、可用性を確保して、スムーズに運用するには、チームの人材、作業対象となるアプリケーション、チーム自体の作業、新たな作業環境となるクラウド プラットフォーム、さらにはネットワーク帯域幅やレイテンシーなどの要素を考慮しなければなりません。

「そのため、CCoE はアプリ開発チームと DevOps チームをメイン ユーザーとして想定すべきです」 と Vijay Gopal 氏は言います。「もちろん、クラウドはビジネス プロセスやワークフローに影響を与えますが、それは後で考慮すべきことです。第一にやるべきことは、クラウドファーストに移行し、アプリ開発チームや DevOps チーム向けにクラウド移行のためのツールやロードマップを用意することです」

「クラウド移行は、オンプレミスで行っていたことを AWS で再現することではありません。それでは機能しません」と同氏は語ります。

Amazon の Elizabeth Boudreau 氏は、IT チームはクラウド移行を行う中で次のような課題に直面すると話します:

  • 新しい DR/BC 計画の作成
  • 既存インフラの再利用または廃止に関する計画の策定
  • クラウドでの稼動に備えたアプリ開発チームの再トレーニング
  • アプリケーションをクラウドで使用する方法に関するトレーニング
  • クラウド セキュリティに関するトレーニング
  • 役職異動に際して必要になるスキル トレーニング
  • CMDB のアップデート
  • 包括的な資産管理監査の実施
  • 変更管理プログラムのセキュリティ監査の実行

ワークロードの移行が正常に完了したあとは、CCoE は更に、TCO を最小限に抑えて ROI を最大化できるように、ビジネス マネージャー、アプリケーション オーナー、セキュリティ チームなど、日常業務でクラウドに携わるあらゆる人員のためのヘルプラインとして機能するロールも担うことになります。

CCoE は、強力なセキュリティ フレームワークの設定、データ ガバナンス ポリシー (特に規制対象データについて)、クラウド請求書の解釈と管理、さらには (ソフトウェア ライセンス購入とは全く異なる) クラウド サブスクリプションの管理などについて、助言とガイダンスを提供します。

エンドユーザーの日常的業務に大きな混乱はないはずですが、IT オペレーションにおいては、新たな知識を習得してクラウド移行を成功に導く必要があります。

メッセージングとコミュニケーション

CCoE の最終的な目標は、ワークロードをクラウドに移行するための反復可能なプロセスを標準化することです。これが成功するか否かは、意図や目的、リファレンス アーキテクチャ等の成果物を組織全体に伝える、CCoE のコミュニケーション能力が鍵になります。

これは継続的なミッションになるため、CCoE には人事、マーケティング、コミュニケーションの各部門代表がメンバーとして参加する必要があります。こうしたチーム メンバーの貢献は、組織全体に影響する市場参入戦略を、CCoE が計画して実行していく際に重要になります。

クラウド フォーカスの IT 組織における CCoE の重要性

IT の世界では、CCoE を組織の DevOps チームとみなすこともできます。他の IT チームを教育・指導し、クラウド最適化プラクティスに則るようにする、中心的なチームとして機能している組織もあります。こうしたチームのすべてに共通しているのは、次のような CCoE の主要原則を遵守していることです。

  • 適切なタイプのチーム構築
  • チームの責務範囲の設定と拡大
  • ベスト プラクティスを教育・維持できるためのチーム支援

これらの各原則について詳しく見ていきましょう。

原則 1: 適切なタイプのチーム構築

私たちは、クラウドネイティブ企業から、大規模エンタープライズ クラスまで、世界中の 様々なIT 組織との連携経験があり、あらゆるタイプのオペレーション、エンジニアリング、財務 (兼任型のハイブリッド タイプ) のチームがクラウド利用を最適化しながらコスト削減を実現してきた事例を見てきました。

卓越した DevOps チームは、成功に導くには、ツールとチームワーク (と文化) のバランスを取ることが重要であることを理解しています。これは、成功するクラウド エクセレンス チームにも同様です。IT 組織および関連利用部門がコストに関するアカウンタビリティを持ち、クラウドの最適な利用方法を示し、コストを最小限に抑えたいと考える、実践的なエキスパートを集めてチームを作ることで、スタート早期からの成功に繋がります。

原則 2: チームの責務範囲の設定と拡大

テクノロジーなしでは、CCoE を成功に導くスキルや責任範囲を設定し、拡大していくことはできません。クラウドに移行し、できる限り効率的に運用するには、無数に存在するコストや使用量のデータポイントを分析しなければなりません。これは、人間だけでは到底不可能な作業です。クラウド管理プラットフォームを使用することで、CCoE は、コストガバナンス、ロールに基づくアクセス管理、コスト、使用量モニタリング、レポート、ライトサイジング等、クラウド最適化に向けた活動を統制し、管理できます。

データ履歴を参照し、トレンド予測することで、財務視点からクラウドの責任範囲を明らかにし、その範囲を拡大できます。また、クラウド最適化に特化したデータ エンジンを用いて、ライトサイジングが可能なクラウドを構築できれば、大規模な環境でも使用量を常に確認できます。これらは、CCoE が IT 組織のあらゆる部署に対して果たすべき責任の一例です。

原則 3: ベスト プラクティスを教育・維持できるためのチーム支援

CCoE チームは、スキルとインサイトを人々と共有し、各チームだけでなく組織全体で、クラウド化を成功に導く必要があります。  エンジニアリングリードから基幹業務オーナー、さらにはエグゼクティブレベルまで、様々なロールに合わせて調整した、適切な視点とデータ分析を提供することで、ステップを先に進めることができるようにサポートします。クラウド コスト最適化と効率的なベスト プラクティスの確立のためにクラウドに実験的要素を取り入れるには、適切なデータと分析によって適切な行動を促す必要があります。

クラウド管理プラットフォームを使用して、肥大化する情報とベスト プラクティスをサポートすることで、セキュリティと整合性を損なうことなく、こうしたインサイトを共有するできるようになります。

 

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