IT チャージバックを成功させるためには?
IT チャージバック導入の取り組みを始めたばかりの組織では、「IT チャージバックとは?」「なぜ組織は IT チャージバックのシステムに移行すべきなのか」といった基本的な質問があげられます。この記事では、IT チャージバック導入を決定した後に、組織がしばしば直面する課題について取り上げます。
Step 1: チャージバックのアイデアを浸透させる
チャージバックはチーム戦です。チャージバックが成功するかは、IT、利用部門 (BU)、そしてコーポレートファンクション (CF) の連携にかかっています。
IT 部門がオーナーとして IT 予算を一元管理している場合、BU と CF からは IT コストが見えないため、まるで制限の無い自由なリソースのように思えます。BU と CF に対して、それぞれが利用した IT 製品・サービスの費用を正しく請求するモデルに移行するには、大きな変化もきたすため、コラボレーションが必須です。
今まで一度も電気料金を払ったことのない人が、突然電気料金の請求書を受け取ることを想像してみてください。突然チャージバックを初めてもうまくいくはずがなく、信頼関係やパートナーシップの構築にはつながりません。
BU と CF の予算担当者に、チャージバックを導入する理由と利点、たとえばイノベーションに割り当てる IT 予算を増やし、ビジネス需要との整合性を高める、といった背景を理解してもらう必要があります。こうしておけば、少なからず反対者はいるにせよ、チャージバックが開始されても突然のことだとは受け取られません。
Step 2: チャージバックに向けた組織化
率直に言って、IT 部門は IT が専門分野であり、財務専門性を備えているケースは少ないでしょう。
多くの場合、効果的なチャージバックを行うことのできる人材やスキルを IT 組織が有していることは稀です。財務スキルは重要になるでしょう。IT 部門は、製品・サービス コストのモデル化、料金設定、請求額の計算といった新たな仕事を担う必要に迫られます。すべては、コスト回収のためです。
チャージバックによって、製品・サービスのオーナーの必要性も生まれます。製品・サービスオーナーは、新たな IT 購買客に対して、IT 製品・サービスの設計、提供、マーケティング、コスト回収を担います。
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チャージバックに向けた準備を行うには、少なくとも以下のようなタスクに、アカウンタビリティと責任を割り当てる必要があります。
- 製品・サービスのポートフォリオの定義
- 製品・サービスの総所有コスト (TCO) の計算
- 製品・サービスのマーケティング
- チャージバック戦略の定義と導入
- コストの回収
チャージバックによって、IT はサプライヤーのような位置づけになります。顧客に対してマーケティングを行い、製品・サービスを販売・提供するのです。チャージバック組織は、そのためにどのような戦略をとるかを決定しなければなりません。
チャージバックには多くの戦略があり、一般的には次のようなものが挙げられます (以下は一例です) :
- アロケーション – 実コストのパススルー、割合や重み付けといった手法で、製品・サービスのコストを顧客に配分します。このアプローチで見られる懸念は、一切・ほとんど使わない製品やサービスへの割合や重み付けで、顧客に不公平な負担を課すおそれがあるということです。
- コストまたは損益なし – このチャージバック戦略では、IT コスト回収を過剰または過少に行うことはせず、回収額はコストと同額でなければなりません。チャージバック金額はこれを達するように設定されます。多くの場合、IT は年度末に損益無し状態にするために、追加の回収または返金を行うことが見られます。
- コスト + 管理費 – 間接費およびその他のコストを考慮し、若干の余分を持たせた金額設定を行います。
- 価格または料金 – IT は、今後の需要を予測するため顧客と連携し、事前に価格または料金を設定します。
Step 3: 適切なシステムとプロセスの導入
スプレッドシートを使ってチャージバックの仕組みを作れるでしょうか? 不可能ではないでしょうが、使うべきではありません。
組織がチャージバックを成功させるために、使うべき適切なシステムとプロセスについての議論に進みましょう。システムとプロセスは、少なくとも次のような役割を果たす必要があります。
- 提供する製品・サービスの定義 実コストの追跡 需要の管理
- 料金プランの策定 請求額の算出 IT への資金移管
- 製品・サービスのマーケティングと販売
- 顧客へのチャージバックの請求書とレポートの共有
- 企業財務システムはきわめて重要です。企業財務システムは、IT にコストを戻すためのチャージバック請求書 (Bill of IT ともいいます) を処理できる必要があります。
このシステムは、監査機能と拡張性を備える、マルチユーザーで使うことのできるものでなければなりません。スプレッドシートが賢明な選択肢ではないのは、このためです。
Step 4: 現状の把握
「これまでに辿った道を知らなければ、これから進むべき道はわからない」ということです。
- 現状を把握します:
- 総 IT コスト
- 各製品またはサービスの総所有コスト BU および CF ごとの合計 IT コスト
さらに現状を把握するには、少なくとも次の情報も必要でしょう:
- 製品、サービス、アプリケーション、テクノロジーのポートフォリオ
- 資産インベントリ
- キャパシティ、用途、利用状況
- プロジェクト
これは、前述の Step 3 のシステムとプロセスの活用と検証を行う絶好の機会です。ベースラインの現状をシステムに保存し、チャージバックを行う製品・サービスの定義付けと価格設定に使用しましょう。
Step 5: IT 予算の利用部門への移管
ご認識の通り、IT 部門はその予算を顧客に移管する必要があります。IT で予算を全て保持したままではチャージバックを実行できません。
予算の移管には多くの戦略があります。
- ビッグバン – 予算全額を一度に移管する。
- 段階的移管 – 移管額を小分けにする。
- 非移管 – 組織によっては一部の IT 予算を管理やイノベーション等のために確保します。
IT 予算の移管は組織にとって根本的な変更であり、企業財務および経営陣からのサポートとコミットメントが必要です。
国外関連法人に IT 製品・サービス コストを請求することで、節税メリットを得ている企業もあります。これは、膨大な額となる可能性があります。たとえば、Digital Fuel が一例ですが、チャージバックを用いて年間 9000 万ドルの課税所得控除を受けているケースもあります。
Step 6: 製品・サービスのマーケティングと販売
IT部門にとって、マーケティングと販売は専門分野ではないでしょう。CIO の組織は、チャージバックによって、製品・サービス、さらには IT 部門自体のマーケティングと売り込みも行う必要があります。
- IT がすべての予算を握っているなら選択肢はありません。BU と CF が予算を持っていれば、それぞれに選択肢があります。IT は、顧客にとって魅力的な選択肢になる必要があります。
- BU と CF に購入してもらう可能性を最大限高めるには、次のことを明確に定義して伝えなければなりません。
- IT は何を販売するのか
- IT はどのような価値を提供するのか IT は他の選択肢よりどのように優れているのか
これらが適切に理解されていれば、顧客満足度も維持できます。
Step 7: 学び続ける
継続的な学習とプロセスの改善は欠かせません。
詳細については、無料の eBook 「ショーバックとチャージバック: 需要を明確化することで、技術コストを最適化する」をダウンロードしてください。
また、Apptio のチャージバック機能についてはこちらから詳細をご覧いただけます。
編集者注: この投稿は当初 Digital Fuel ブログにおいて公開されましたが、同ブログは閉鎖されています (2018年 1月)。本稿では新たなリンクとリソースを追記して更新しています。